腸を荒らすこと、すなわち腸に炎症を起こすこと。これが体調不良や様々な病気を引き起こします。アレルギーや自己免疫疾患などの原因にもなります。病気とまで行かずとも、なんだか体調がすぐれない、気分が落ち込む。こんな時、実は腸に原因があることもあります。肥満もその一つです。それほど、腸は私たちの身体にとって重要な器官なのです。腸脳相関と言って、腸は神経伝達物質を介して脳とも相関的に繋がっていますから、腸のコンディションは脳のコンディションにも強く関係します。アルツハイマー病の原因の一つとも考えられています。栄養面から見た脳機能改善についても、要望があればまた解説したいと思います。
さて、腸を荒らす、腸に炎症を起こす、リーキーガット(腸漏れ症候群)を起こす、これらの原因とはなんでしょうか。実は、私たちにとってとても身近で、皆さんが良く口にするような食品等がこれを引き起こします。まず、それらを以下に列挙します。
・小麦(グルテン)
・乳製品(カゼイン)
・砂糖(果糖)
・加工食品、加工肉(添加物・保存料)
・ステロイド
・抗生物質
他にもありますが、特に腸を荒らす大きな原因となるのが上述のものです。
えっ、そんなもの普段から良く口にしてるよ!と驚いたでしょうか。これらは、多くの人が日常的に口にしていますからね。でも、だからこそ多くの人の腸が荒れており、また多くの人の腸にリーキーガットが起きているのです。
この部屋のこれまでの記事でも、栄養の引き算として、砂糖(果糖)や質の悪い油を避けるべしとの話しを書きましたね。その中で小麦についても、精製糖質なのでGI値が高く血糖値も上げやすいことから、出来るだけ減らすべしと触れました。私も小麦製品(パスタやピザ、ラーメン、うどんなど)はめったに口にしないようにしています。その理由は、GI値や血糖値への影響もさることながら、実は腸を荒らすからということが一番の理由なんです。同じ理由から、牛乳も飲みません。牛乳については、ミネラルバランスが悪く、骨を脆くするからというもう一つの理由もありますが、これについてはまたミネラルのお話しをするときにでも解説しましょう。
では次に、なぜこれらが腸を荒らすのか、そのメカニズムを解説して行きます。
まず、小麦と乳製品ですが、これらにはそれぞれグルテン、カゼインという物質が含まれます。この二つに共通しているのは、人間の胃腸ではとても消化しにくいものだと言うことです。消化しにくいので未消化状態のまま腸に入ってきてしまうことで腸に炎症を起こします。中でも小麦に含まれるグルテンは、グルテンアレルギーという言葉としても有名ですね。テニスプレーヤーのジョコビッチがグルテンアレルギーを持っており、食事から小麦製品を一切排除したら、とたんに体調が良くなりテニスでトッププレイヤーまで駆け上がったと言うことでも有名です。(書籍「ジョコビッチの生まれ変わる食事」に著されています)
グルテン不耐性の人はこのように明らかな不調が現れるのですが、やっかいなのは食べてすぐにアレルギーが起こる即時型アレルギーではなく、遅延型アレルギーであるということです。食べたものと体調不良やアレルギーの関係がわかりにくいのです。じゃあ、グルテン不耐性、グルテンアレルギーではない人は大丈夫なのかと言うと決してそうではありません。グルテンを食べることによってゾヌリンという物質が過剰に分泌されます。そして、このゾヌリンは腸のタイトジャンクションを破壊する(タイトジャンクションを開いてしまう)物質だと言うことがわかっています。腸のタイトジャンクションを開いてしまうということはリーキーガットを引き起こすということです。リーキーガットの害は前回の記事で説明しましたね。このようにグルテンはかなり厄介な物質なのです。
そして、更に厄介なことは、人間がグルテンを美味しく感じてしまうということです(砂糖(果糖)と同じですね)。グルテンは小麦のモチモチ感を生むものなので、グルテンが多いほど、パンや麺にしたときに美味しく感じるのです。そして、近代の小麦は品種改良によってグルテンがとても多くなっているのです。その方が良く売れますから。
また、グルテンは神経伝達物質(ホルモン)の撹乱物質であることもわかっています。そういう意味でも砂糖(果糖)と似ています。どちらも麻薬のような依存性を生むのですから厄介です。パンが大好きな人、焼きたてのパンの香りがたまらないって人、多いですよね。これらの人はグルテン依存になっている可能性があります。
ホリエモンがプロデュースしている「小麦の奴隷」というパン屋さんをご存じでしようか。この店名、ベストセラーにもなった「サピエンス全史」に著されている言葉から取ったもののようですね。サピエンス全史には、人類は農耕の開始によって「小麦の奴隷」になったと著されています。どう言うこと?と思う人は以下のサイトを見て下さい。その理由が1分程度で読めるマンガとしてとてもわかりやすく面白く描かれています。
https://togetter.com/li/1153781
このようにして、人類は小麦の奴隷となり、世の中には小麦製品が溢れてしまったようです。そして、それとともに多くの人の腸内環境が(特に近代において)荒れることになってしまったと言うことです。残念ながら、世界の人口80億人弱を支えるためには小麦なしでは成立しない状況になってますから、人類は小麦の奴隷からもう逃れることは出来ません。
話しが逸れましたね。
パンや小麦製品が好きな人は信じたくないかもしれませんが、小麦は私たちの腸を荒らす原因の一つであることは間違いありません。ただし、小麦は危険だから一切食べるなとまで極端なことを言うつもりはありません。たまに嗜好品として食べる程度なら良いでしょう。でも、習慣として頻繁に食べることは避けた方が良いでしょうね。私もそんな距離感で小麦を扱っています。決して小麦製品がキライな訳ではないんですけどね。でも、グルテン不耐性の人やアレルギーに悩まされている人は徹底して避けた方が賢明だと思います。人類がみなそうすることはもはや不可能ではありますが。
小麦だけで随分と文字数を使ってしまいましたね。つづきはその2へ。