ここから腸内環境のおはなしです。
腸内環境と一口に言っても、人間の臓器である腸管そのものと、腸内に生息している腸内細菌の両面から見ていく必要があります。

そもそも腸という臓器はどんな役割を担っているのでしようか。単にうんちを形成して老廃物を排出するための臓器ではありません。簡単に言えば、栄養の吸収と外敵や毒素などからの防御を担っているということになります。吸収と防御。この相反することを非常に高度にやってのけるすばらしい機能を有しているのです。

人間の身体は、竹輪の様な構造をしています。口~胃~腸~肛門までが一本の管になっており、この部分が竹輪の穴の部分に相当するわけです。つまり、口~肛門に至る管は身体の内部ではなく外部なのです。腸内と言いますが、それは内ではなく実は外なのです。私たちは栄養を口から取り込むと解釈しがちですが、正確には栄養を取り込むのは腸からです。口から胃までは、栄養を取り込むための前段である消化を行なっているに過ぎません。ですから、例え十分な栄養を口から摂ったとしても、腸が健全でないと肝心の栄養素は体内にきちんと取り込めないのです。

腸は栄養素を外部から内部に取り込む機能を有しているのですから、腸管にはそのための「隙間」があるわけです。と言うことは、その「隙間」を通ってウィルスや毒素なども体内に侵入してしまう恐れがあります。なんと言っても、腸管の中は身体の外部なのですから、様々な外敵や毒物に晒されています。外敵や毒素が体内に侵入してしまうのは非常にマズイ事態なので、ここを緻密に制御する機能が腸管には備わっているのです。このための防衛線の一つとして、腸管には全身の約7割もの免疫細胞が集まっています。腸が免疫の要と言われる所以ですね。このように、一見大した役割を担っているようには見えない腸ですが、実は脳と並ぶほど(脳以上とも言われるほど)、重要かつ高度な機能を持つ器官なのです。

そして、もう一方の重要な役者、腸内細菌の方はどうでしょうか。腸内細菌はおよそ1000種類、100兆個ほど生息していると考えられています。私たち自身の細胞の数が37兆個とも言われていますから、それより遥かに多いと言うことになります。実際のところ、腸内細菌についてはまだわかっていないことが多く、まだ研究途上の分野なので、ひょっとしたらもっと多いのかもしれません。また、個人差も大きいと考えられます。

では、腸内細菌の役割は何でしょうか。一つには、腸管を通して外敵が体内に侵入しようとすることを防いでくれるバリアの役割。私たちの防衛隊である免疫細胞の前線を担ってくれます。そしてもう一つには、脂肪酸やビタミンなど、私たちにとっての栄養素を産生する役割を腸内細菌は担ってくれてます。私たちの健康にとって無くてはならない存在、まさに共生しているのですね。だから、腸内細菌が健全でなければならないのです。中には悪さをする腸内細菌もいますからね。

では、この腸管の健全性や腸内細菌の健全性を損なうのはどんな場合でしょうか。また、健全性を上げるにはどうしたら良いでしょうか。この両面から腸内環境を捉えることが重要です。腸内細菌にばかり目が行きがちですが、腸内環境を整えるためには腸管と腸内細菌のことをよく知っておく必要があります。

と言うことで、腸内環境について次回から腸管と腸内細菌の両面から掘り下げて解説して行きたいと思います。