糖質をたくさん食べると血糖値スパイクが起こりやすくなります。また、これがインスリン抵抗性を招きます。同時に糖質の代謝能力も落ちていきます。このことが老化を加速させるばかりか、様々な生活習慣病を招きます。
では、こうした事態を避けるにはどうしたら良いでしょうか。糖質をいっさい食べなければ血糖値が急上昇する場面は減るでしょう。しかし、これは現実的ではありませんし、その弊害もあります。
ここでは糖質を摂りつつも血糖値を乱高下を抑え、糖質の代謝能力も落とさない、そんな上手な糖質との付き合い方について解説します。
そのポイントの一つがグリセミック・インデックス指数(GI値)です。難しげなワードですが、これは平たく言えば「その食物を食べた時に血糖値が急上昇する度合い」を指数にしたものということです。
例えば、白米やパンなどは最も高い部類になります。同じ米や小麦でも、玄米や雑穀米、全粒粉のパンなどになると少しGI値が低くなります。玄米や雑穀米、全粒粉などは食物繊維が削ぎ落とされてないのでGI値が低いのです。食物繊維が削ぎ落とされてしまった「白い糖質」は消化吸収が早く、血糖値がガツンと上がります。
また、ご飯や芋類などは温かい状態よりも冷めた状態の方がGI値は低くなります。残念ながら、炊きたてのご飯やホクホクのジャガイモは血糖値を上げやすいのです。炊き立てのホカホカご飯より冷や飯、ホクホクのジャガイモよりポテサラの方が良いということです。ごはんやジャガイモは冷えると難消化性デンプンが増えることからGI値が下がるのです。どうしてもホカホカホクホクが食べたいのなら、食物繊維をたっぷり摂りながら食べましょう。
また、食べる順番によっても血糖値の上昇を緩やかにすることが出来ます。それは、GI値が低いものから順に食べ、GI値が高い食品を最後に食べることです。これによって同じものを食べていても血糖値の上昇度合いが変わってきます。
例えば、フレンチのコースではパンが早い段階で出て来ますね。一方、和食のコースではごはんは最後の〆ですよね。この場合、和食コースの順番の方が血糖値が上がりにくくなります。野菜や肉・魚類を先に食べて、ごはんは最後に食べましょう。間違ってもいきなり白米をガツガツと行かないように。とにかくしっかり噛んでゆっくり食べましょう。
このように、同じ糖質でも食べ方や食べる順番などの工夫によって血糖値の急上昇を和らげることが出来ます。そうすることで、インスリンの分泌も少なくてすみ、インスリン抵抗性を招いたり耐糖能を落とすことを防ぐことが出来ます。
ちなみに、アスリートが身体を大きくしたい場合には、このインスリンの作用を活用すると効果的です。インスリンがブドウ糖を細胞に取り込む際にはアミノ酸も一緒に取り込む作用があります。つまり、タンパク質だけでなく糖質もしっかり食べる方が筋肉がより育つのです。筋肉を増やすとき(カラダを作るとき)にもインスリンは重要なホルモンと言えます。
若いアスリートなどがどんぶり飯を何杯も掻き込むシーンをテレビで見たりしますね。あれもインスリンを使ってカラダを大きくするという意味では理にかなってるのです。ただし、ごはんだけではいけません。ごはんと一緒にタンパク質もしっかり摂らなければ筋肉は育ちません。
ところで、若いアスリートはどんぶり飯を掻き込んでるのに血糖値スパイクは大丈夫なのかと思いますよね。確かに食後血糖値は上がることでしょう。しかし、若いほどインスリン感受性が高いので、食後血糖値もすぐ落ち着きます。ですから、比較的弊害は出にくいわけです。
ただし、どんぶり飯を掻き込んで身体を大きくするようなアプローチは20代くらいまでにしておいた方がいいでしょうね。このような食事法を長く続ければ徐々に弊害の方が目立つようになります。中高年アスリートの場合は、GI値を意識しつつ適量の糖質を上手に摂るようにしたいものです。短期間で身体を大きくするのでなく、じっくり取り組んだ方が良いでしょう。
いずれにせよ、筋肉量が多いことは血糖値の問題にも有利に働きます。インスリンはまず筋肉の細胞に働きます。ですから、しっかり運動をしている人や筋肉量が多い人は血糖値も上がりにくいのです。筋肉が多いほど筋肉に蓄えられるグリコーゲンも多くなりますからね。同じ量の糖質を食べても筋肉が少ない人より脂肪も付きにくくなります。そして、筋肉が多いほど老化しにくいということも言えるでしょう。
余談ですが、筋肉からはマイオカインという、通称「若返りホルモン」が分泌されることもわかっています。老化を遅らせたいなら、糖質を上手に摂りつつ筋肉も少しづつ増やしていきましょう。