健康診断で「空腹時血糖値」や「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」の値が正常範囲内であれば多くの人は日常生活の中で血糖値を意識することはあまりないでしょう。確かにすぐには糖尿病の心配はいらないでしょうが、とは言え血糖値を意識することは健康を考える上で重要です。
ところで、健診項目にある空腹時血糖値やHbA1cは何を示しているのでしょうか。
空腹時血糖値はまさに字の如く、空腹状態における血糖値です。健康診断は通常10時間以上食事を摂っていない状態で検査を行います。ですから”空腹時“と付くわけです。血糖値は1日の中で上がったり下がったりしていますが、空腹時の比較的安定しているタイミングでの数値が空腹時血糖値ということです。とは言え、ここでわかるのはあくまでも検査をした”その時”の数値です。例え空腹時とは言え、前日の食事や運動など生活状態の影響を受けることもあります。
もう一つのHbA1c。これは血液中のヘモグロビンの糖化(糖化については後続の記事で改めて解説します)の度合いを表します。ヘモグロビンは3ヶ月程度でターンオーバー(細胞が入れ替わること)しますから、HbA1Cはこの期間の血糖の状態が反映されます。つまりHbA1Cが高い場合、2~3ヶ月間に渡って高血糖状態が続いていたことを示します。
インスリン抵抗性が生じているとこれらの数値が高くなり、糖尿病のリスクありということになります。一方、インスリンがきちんと機能していればこれらの数値は標準範囲内に入ってくるはずです。
血糖値は一日の中で変動しますから、食事の際にたくさんの糖質を食べれば、食後に血糖値は急上昇します。食材や食べ方によっても血糖値が急上昇することがあります。そして、インスリンがきちんと働けば急上昇した血糖値は2時間程度で元の水準に戻るわけです。
これは一見問題ないように見えますが、食事の度に血糖値が乱高下をしていれば血管はその都度炎症で傷つきます。これを血糖値スパイクと呼びます。瞬間的な火事が起こっているわけです。空腹時血糖値やHbA1Cに異常がなかったとしても、日常的に血糖値スパイクを繰り返していたら血管は劣化し、老化や病気を招くことにつながるのです。1日3食全てで血糖値スパイクを起こしていれば1年で1,000回以上、10年で10,000回以上にもなりますからね。
また、食後に血糖値が急上昇したあとにインスリンの働きで血糖値が下がりすぎることもあります。低血糖状態になるのです。高血糖だけでなく低血糖も問題があります。低血糖状態になれば、冷や汗、動悸、けいれん、手足の震え、強烈な空腹感などが起こります。低血糖はエネルギー不足の状態ですが、高血糖の反動で起こることが多くあります。
食後に眠気が来たり、食後3時間前後で空腹感を感じて糖質を欲するような場合は、血糖値がジェットコースターのように上下している可能性があります。
血糖値は1日の中で変動しますが、特に食事の影響を受けます。健康と若さを保つためには血糖値の変動が出来るだけ少なくなるような食事の取り方が大切です。