先の投稿で、糖質は私たちにとって必須ではないが、適量を上手に摂った方が良いと書きました。ところで、糖質は私たちの身体にどのようにはたらくのでしょうか。

おさらいになりますが、タンパク質は主に身体を作る材料に、脂質は主に活動するためのエネルギーになります。もちろん、タンパク質は糖新生によって一部エネルギーにもなりますし、脂質は細胞膜を始めとして身体を作る材料にもなります。

では、糖質はと言うと、私たちが活動するためのエネルギーになります。糖質は脂質の様に身体を作る材料にはなりませんので、エネルギー源としてのみはたらきます。つまり活動するための主要なエネルギー源となるのは、主に脂質と糖質ということですね。

では、私たちが摂った糖質はどのように代謝されてエネルギーになるのでしょうか。糖質は胃で消化された後、小腸から吸収され、血糖として血液に乗って全身の細胞に届けられます。そして、細胞内でエネルギー産生に使われます。これによって私たちは活動出来るのです。

また、糖質はすぐにエネルギー産生に使われるだけでなく、グリコーゲンにかたちを変え、肝臓や筋肉にエネルギー源として蓄えられます。ただし、グリコーゲンとして蓄えられるエネルギー量はそれほど多くありません。およそ1時間くらいの運動を賄える程度に過ぎません。

グリコーゲンが満タンな状態で、さらに糖質が体内に入って来た場合はどうなるのでしょう。私たちの身体はこれを無駄に捨てたりしません。この時、グリコーゲンは満タンですから、糖質を脂肪に変えて体脂肪として貯蔵されます。

人類の歴史は飢餓の歴史でもありました。せっかく食べることが出来た糖質ですから、飢餓に備えて備蓄するわけです。体脂肪はグリコーゲンよりも遥かに多くのエネルギーを貯め込むことが出来ますから。

しかし、現代の先進国では飢餓状態になることなどまずありませんから、体脂肪がエネルギーとして使われる場面はそれほどありません。この結果、過剰に摂った糖質は体脂肪としてどんどん溜め込まれ、肥満を生むことになってしまいます。糖質をたくさん食べたら太るというのはこうしたメカニズムによるものです。

太るだけならいいじゃないかと考える人もいるかもしれませんね。でも、単に体型が変わるだけではなく、その背後では身体にとって好ましくないことが起こっているのです。

その鍵を握るのがインスリンというホルモンです。インスリンと言えば糖尿病の人が血糖値を下げるために注射することでも知られていますね。このことからもわかるように、インスリンには血糖値を下げる作用があります。

インスリンの作用によって、細胞表面のブドウ糖受容体の口が開き、血液中の糖質(ブドウ糖)が細胞内に取り込まれます。そして、細胞内でエネルギーとして使われるのです。この結果、血液中の糖(いわゆる血糖)が減り、血糖値が下がることになります。糖尿病の人はこのインスリンの出が悪くなっているため、注射でこれを補い血糖値を下げなければいけなくなるわけです。

次回は血糖とインスリンの関係を掘り下げつつ、これが私たちの身体にどのような影響をもたらすのかを見ていきましょう。