健全な細胞を作り維持するには、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、さらに不飽和脂肪酸もオメガ3、6、9がバランスよく必要でしたね。そして、オメガ3と6は多価不飽和脂肪酸と呼ばれ、体内で合成出来ないことから必須脂肪酸になります。つまり、必ず外から摂取する必要がある脂肪酸です。一方、オメガ9は一価不飽和脂肪酸と呼ばれ、体内でも合成出来ることから非必須脂肪酸です。

オメガ3が含まれているのは、亜麻仁油、エゴマ油、魚油(特に青魚)などです。オメガ6は、大豆油、コーン油、サフラワー油など(所謂サラダ油と呼ばれるもの)やごま油、米油、肉の脂などに含まれています。オメガ9は、オリーブオイル、菜種油などです。

現代の平均的な食生活ではオメガ6過多になる傾向があります。炒め物や揚げ物にはサラダ油を使う人が多いですからね。スーパーなどでは大きなボトルに入ったサラダ油が300円前後で買えたりします。とても安くて便利ですから重宝されていますね。

一方、オメガ3は亜麻仁油やエゴマ油などあまり身近ではありませんし、かなり高価です。また、魚の消費量も減っていますから、オメガ3は不足する傾向にあります。

先の記事にも書いたように、健全な細胞膜を作るにはオメガ3、6、9がバランス良く揃っている必要があります。偏りがあれば柔軟性がある細胞膜が作れません。

さらに、脂肪酸は生理活性物質としても働きます。生理活性物質として、オメガ6は炎症を促進する作用を持ち、またオメガ3は炎症を抑制する作用を持っています。つまり、炎症という事象に対し、オメガ6はアクセル役、オメガ3はブレーキ役になるということです。ですから、オメガ6の摂取が多くオメガ3の摂取が少なければ、体内で炎症が起こり、血管や脳に影響を与えます。

さらに、オメガ6過剰はアレルギーの原因にもなります。炎症によって生理活性物質の一つであるプロスタグランジンE2(PGE2)と言う物質の分泌が増え、これが免疫反応を制御するヘルパーT細胞を活性化します。これによって免疫が亢進し、アレルギーを引き起こすのです。

このため、アレルギーを抑制するには、炎症のブレーキ役となるオメガ3をきちんと摂ることが必要です。このように、オメガ6と3のバランスが崩れると、健全な細胞膜が作られず、生体膜を通した栄養のやり取りに支障を来たすばかりでなく、アレルギーなどの様々な不調の原因にもなります。

オメガ6は平均的な食事をしていれば容易に摂れますし、むしろ摂りすぎになります。平均的な日本人は、オメガ6:オメガ3比が5:1ぐらいだと言われています。理想的な摂取比率は、1:1程度ですから、食生活においてはオメガ6を減らし、オメガ3を増やすよう意識する必要があります。

オメガ3の摂取を増やすには、やはり魚、特に青魚を習慣的に食べるようにしたいものです。マグロ、鮭、イワシ、アジ、サバなどです。毎日、これらの魚のいずれかを食べるようにすると、オメガ3の摂取も増えます。

ただし、青魚を食べる際には少し注意も必要です。魚を習慣的に食べるなら出来るだけ小型のものを選びましょう。大型のものになるほど、生物濃縮によって有害物質(水銀など)の含有量も増えます。妊婦さんはマグロを頻繁に食べない方がいいと言うのはこのためです。妊婦さんでなくとも、マグロは月に1~2回程度にしておくのが無難です。

そして、もう一つの注意点は、酸化の影響です。不飽和脂肪酸は酸化しやすい油ですが、中でもオメガ3はとても熱に弱く酸化しやすい油です。酸化した油には過酸化脂質が含まれ、活性酸素を生みます。活性酸素は細胞にダメージを与える物質ですから、出来るだけ避けるべきです。身体に良いと思って摂っている油が、身体にとって毒になってしまっては意味がありませんね。

酸化は酸素や紫外線、そして熱によって起こります。魚の干物は美味しいですね。しかし、干物は酸素と日光に曝して作るのですから、油が酸化してしまいます。干物が茶色くなっているのは酸化している印です。また、フライは非常に高温になる調理法ですから油の酸化も進みます。フライは出来るだけ避けた方が賢明です。

亜麻仁油、エゴマ油などの植物油も酸化には注意が必要です。これらの油は、通常、小さい遮光容器に入っていますね。これも酸化を防ぐためです。とてもデリケートな油なので、開封したら早めに使い切るようにした方が良いでしょう。当然、熱にも弱いので、炒め物などの油としては不適です。私はサラダなどに掛けたり、味噌汁に入れて摂るようにしています。

ところで、オリーブオイルに代表されるオメガ9はどうでしょうか。オメガ9は体内で合成出来ますから、必須脂肪酸ではありません。しかし、オリーブオイルに含まれるオレイン酸は熱に強く、酸化しにくいという特徴があります。このため、調理の際にはオリーブオイルを活用するのも良いでしょう。オリーブオイルを上手に活用することで、オメガ6過剰摂取の抑制にもつながります。

「飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸カラダにいいのはどちら?」でも解説したように、不飽和脂肪酸はとても酸化しやすい油です。酸化がもたらす弊害もこの記事の中で書いた通りです。不飽和脂肪酸を摂る場合は、オメガ3だけでなく、オメガ6も含めて酸化には気をつけた方が良いでしょう。

調理の際に不飽和脂肪酸を使うならば、まずは酸化しにくい油を選ぶことです。前述の通り、オメガ9のオリーブオイル、オメガ6では米油が酸化しにくい油です。米油には抗酸化物質であるビタミンEが豊富に含まれていますから。

そして、油は出来るだけ遮光して保管し、早めに使い切ること、揚げ油を繰り返し使わないことなどに注意したいものです。