飽和脂肪酸は、私たちが活動するためのエネルギーになり、また細胞膜の材料として、膜の強度を担保する役割も担います。肉の脂やバター、ココナッツオイルなどに多く含まれています。そして、飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸と比べて酸化しにくいという特徴があります。

飽和脂肪酸は炭素が鎖のようにつながって構成されているのですが、その炭素の数によって、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の3種類に分類されます。炭素の数が少ない方から順に、短鎖 → 中鎖 → 長鎖 となります。そして、それぞれに特徴があります。主なところを解説していきます。

○短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸は食物にはあまり含まれていません。しかし、重要な働きをする脂肪酸なのです。私たちが活動するためのエネルギーになるのはもちろんのことなのですが、特に重要な働きとほ、ミネラルの吸収を助けてくれるということです。ミネラルは微量栄養素なのですが、吸収が難しく、ゆえにミネラル不足になりやすいのです。

ミネラルを食事やサプリでしっかり摂っていても、短鎖脂肪酸が十分になければせっかく摂ったミネラルも身体に吸収されません。そんな大切な役割を担う短鎖脂肪酸ですが、食物にあまり含まれてないとしたら、どのように摂ったら良いのでしょうか。

実は、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵することで短鎖脂肪酸が生成されるのです。つまり、腸内環境が良好で善玉菌が多ければ短鎖脂肪酸は腸内で生成されます。逆に、腸内環境が悪ければ、短鎖脂肪酸は十分に生成されません。ミネラルをしっかり吸収出来るようにするカギは腸内環境にあるのです。

腸は免疫機能にとって、最重要拠点でもあります。腸内環境を整えることは免疫機能の強化にもつながります。また、免疫機能を強化するためには、亜鉛やセレンなどのミネラルも必要ですから、腸内環境と免疫機能は切っても切れない関係にありますね。


○中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸は、ココナッツオイルやパームオイルに含まれています。中鎖脂肪酸は摂取してからエネルギーになるまでがとても早いのが特徴です。通常、脂質の代謝にはカルニチンという物質が必要になります。カルニチンが十分にないと、体内の発電所であるミトコンドリアに燃料である脂肪酸を運び込めません。しかし、中鎖脂肪酸に限っては、カルニチンがなくとも発電所に運び込むことが出来るので、すぐにエネルギーになるのです。

カルニチンの産生は、老化とともに落ちていきます。そうなれば、摂った脂質がエネルギーになりにくいので、太りやすくなります。しかし、中鎖脂肪酸についてはその心配はいりません。

中鎖脂肪酸100%のMCT(medium chain triglyceride)オイルという商品があります。エネルギーになりやすく、体脂肪にもなりにくい油です。食が細くなった高齢者や病気の際のエネルギー補給にはとても適しています。ほぼ無味無臭なので、食事や飲み物に加えて摂ると良いでしょう。熱に弱いので炒め油などには使わないようにしましょう。

糖質制限をする場合、糖質の摂取が減るので、脂質代謝を活性化しなければなりません。しかし、糖質代謝中心だった人がいきなり糖質制限をしても、スムーズに脂質代謝に切り替わらないことがあります。そんな時にMCTオイルを摂ってあげると、脂質代謝が活性化し、ケトン体の生成が促進されます。脂肪が燃えやすい状態になるわけです。

私も糖質の摂取は少なめです。エネルギーが不足すると糖新生が起こり、エネルギー産生のために筋肉(タンパク質)が分解されてしまいます。ですから、私も糖新生を防ぐために、MCTオイルを常備しており、コーヒーに加えて飲んだりしています。


○長鎖脂肪酸

長鎖脂肪酸は、肉の脂、バターなどの身近な食品に含まれています。長鎖脂肪酸は私たちが活動するためのエネルギーになりますが、中鎖脂肪酸に比べると、エネルギー化には一手間かかります。先に書いたように、体内の発電所であるミトコンドリアに長鎖脂肪酸を運び込むためには、これを運んでくれるカルニチンが必要です。

そして、老化とともに体内でのカルニチンの産生力は落ちていきますので、長鎖脂肪酸をきちんとエネルギー化するには、外からしっかりカルニチンを補給することも必要です。カルニチンは赤身肉に多く含まれて、中でも羊肉は多く含みます。私も加齢とともに、体脂肪の落ちが悪くなってきましたので、減量時にはカルニチンをサプリで補給することもあります。

冒頭にも書いたように、飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸と比べて酸化しにくいという特徴があります。肉にはエイジング肉というものがありますが、エイジング魚は聞いたことがありませんね。魚は不飽和脂肪酸が多いので、酸化しやすく、エイジングなどしようものなら脂が臭くなり食べられたものではなくなるでしょう。

不飽和脂肪酸より酸化しにくいのですから、高温調理となる炒め物や揚げ物には飽和脂肪酸が多いラードを使うのは良い選択ですね。我が家も炒め物にはラードをよく使います。

飽和脂肪酸は血液がドロドロになるから身体に悪い、そんなイメージも少しは変わったでしょうか。