飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、どちらも私たちの身体には必要です。具体的な例を挙げてみましょう。例えば、細胞膜は脂質で出来ているわけですが、どのような脂質から出来ているのでしょうか。

細胞膜の主要な構成要素はリン脂質と呼ばれるものです。そしてリン脂質は、リン酸を頭にしてそこから2本の足が伸びたような構造をしています(二本足のタコを想像して下さい)。2本足のタコがびっちり並んで膜を作っているわけです。その二本の足の一本は飽和脂肪酸、もう一本は不飽和脂肪酸から出来ています。飽和脂肪酸は膜の強度を左右し、不飽和脂肪酸は膜の柔軟性を左右します。

そして、不飽和脂肪酸の方の足は少し折れ曲がった形をしています。この曲がり具合がオメガ3、6、9で違います。折れ曲がり具合はこの順番で小さくなります。この折れ曲がりが柔軟性を生みます。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスが取れていれば強度と柔軟性を絶妙に合わせ持った生体膜が出来るのです。つまり、しっかりした細胞膜を作るには、飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸も必要だと言うことです。不飽和脂肪酸もオメガ3も6も9も必要だと言うことです。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、どちらかが過剰でも不足していてもいけません。アンバランスでは、強度と柔軟性を持った細胞膜が作られません。動物性の脂は身体に悪いからと避けすぎれば、強度が不足した細胞膜が出来てしまいます。不飽和脂肪酸にしても、いわゆるサラダ油=オメガ6ばかりをたくさん摂れば、柔軟性が足りない細胞膜が出来るでしょう。

強度も柔軟性も不十分な細胞膜では、細胞膜を通した栄養のやり取りにも支障を来します。また、細胞そのものが壊れてしまうこともあります。私たちの身体をミクロに掘り下げていくと、細胞に行きつきます。脳も筋肉もあらゆる臓器も細胞から成り立っています。ですから、健全な身体のためには細胞が健全でなければなりませんし、そのためには細胞膜が健全でなければなりません。

細胞膜は不飽和脂肪酸からも構成されているので、活性酸素によって簡単に酸化してしまいます。しかも細胞内では酸素を使ってエネルギー産生をしているので、常にスーパーオキサイドという活性酸素がうろついているのです。この活性酸素の処理がきちんと出来るかどうかも重要です。

もちろん私たちの身体には、活性酸素を無毒化する物質を作る機能が備わっています。SOD(super oxide dismutase)やグルタチオン、カタラーゼと言った抗酸化物質を体内で生成出来ます。これらの物質を生成するにほ、亜鉛やセレンなどのミネラルが材料として必要になります。しかし、困ったことに歳をとるほどSODの生成量が減ってしまうのです。歳をとるほど活性酸素にやられやすくなってしまうということですね。

ですから、体内で生成出来る抗酸化物質だけでなく、外から食物を通して抗酸化物質を摂り入れることも重要です。自然界では植物がこのような抗酸化物質をたくさん持っています。植物は、常に太陽を浴びることでエネルギーを生成するので、絶えず活性酸素にさらされています。ですから、活性酸素から身を守るためにさまざまな抗酸化物質を生成しているのです。

例えば、植物が持つ抗酸化物質は、ビタミンC、ビタミンEです。さらに植物が持つ化合物が強い抗酸化作用を持っています。この化合物はファイトケミカル(フィトケミカルとも言う)と呼ばれ、カロチノイド、フラボノイド、タンニン(カテキン)、セサモールなどがこれに当たります。

これら抗酸化物質が不足すればたちまち活性酸素にやられてしまいます。健康な細胞を作るには、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸といった材料も必要ですし、健全な細胞を維持するには抗酸化物質の常備も重要なのです。