ここからは脂質のはなしです。ところで、脂質って何でしょう?そうアブラですね。脂とも書くし、油とも書きます。一般的には固形のものを脂と書き、液体状のものを油と書きますね。どちらも脂質です。脂肪酸という分子が脂質の主な構成要素なのですが、脂肪酸に糖質やタンパク質がくっついたものを脂質と呼びます。以降、わかりやすくするため、脂肪酸も脂質と表現します。
脂質は主にはエネルギー源になります。身体全体ももちろんですが、特に脳、中でも脳の神経細胞をスムーズに動かす働きがあります。よく「脳のエネルギーは糖質だけだ。疲れた時は甘いものを摂るのがいい」と言いますが、これは間違いです。脂質、正確にはケトン体は脳のエネルギーになります。そして、糖質よりも神経細胞がスムーズに働きます。
そして、脂質はエネルギー源としてだけではなく、身体(細胞)を作る材料にもなります。一つ一つの細胞は膜で周囲と隔てられています。この細胞膜は脂質で出来ていますから、脂質が不足すれば丈夫で柔軟性のある細胞膜が出来ません。
細胞膜の中では細胞内小器官がタンパク質の合成やエネルギー産生を行っています。細胞の外とを隔てている細胞膜がしっかりしていなければそもそも細胞内の活動が上手く行われず、細胞も壊れてしまいます。細胞が壊れればこれが老化や病気につながります。
また、コレステロールも脂質の一種です。コレステロールは悪者と捉えられがちですが、ホルモンやビタミンD、胆汁酸などを作る材料にもなります。コレステロールが不足していては健全な身体が作られません。そのため、コレステロールの7割は体内で作られているのです。食材からは3割程度です。油を控えても簡単にコレステロール値が下がらないのはこのためです。
身体が必要としているから作られているのです。コレステロール値が高いと言うだけで簡単にスタチンなどのコレステロール低下薬が処方されますが、無闇にコレステロールを減らしてしまえばこれによる不具合も出てくることでしょう。結果として、老化が進むことになります。身体が必要としているのに、薬は無理矢理これを減らしてしまうのですから。典型的な対処療法であり、ポイントがずれていると言わざるを得ません。動脈硬化の真の原因はコレステロール自体にはありません。
このようにとかく悪者にされがちな脂質ですが、一律に悪者扱いするのはいけません。無闇に油を控えるのではなく、積極的に摂る脂質、控える脂質、摂らない脂質と適切に選択することが重要です。
では、どのように選択すればいいのでしょうか。そのためには、まず脂質の種類とそのはたらきを理解しなければなりません。
まず脂質(脂肪酸)を大きく分類すると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。常温で固形になるものを飽和脂肪酸、液体のものを不飽和脂肪酸と呼びます。そして、飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸もさらに細かく分類されます。簡単に整理すると以下のようになります。これらの脂肪酸が含まれる代表的な食材も併せて記載しておきます。
○飽和脂肪酸
①短鎖脂肪酸:酢、バターなど
②中鎖脂肪酸:ココナツオイル、パームオイルなど
③長鎖脂肪酸:肉や魚の脂、ココナツオイルなど
○不飽和脂肪酸
①オメガ3:亜麻仁油、エゴマ油、魚油など
②オメガ6:リノール酸(大豆油、コーン油、サフラワー油など所謂サラダ油と呼ばれるもの)、アラキドン酸(肉の脂)など
③オメガ9:オリーブオイル、菜種油など
④トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニングなど(人工的に水素を加えて固形にしたものを人工トランス脂肪酸と呼びます)
これからのお話しには上記の言葉が出て来ますので、このような分類と名称を簡単に覚えておいて下さい。