さて、健康で健全な心身を維持するには、ビタミンはどれぐらいの量が必要なのてしょうか。答えは「人によってマチマチ」です。答えになってるようななってないような感じですね。でも、これが事実なのです。
代謝は酵素にビタミンが結合することで起こるわけですが、酵素とビタミンとの結合のしやすさ(親和力)が人によってマチマチなのです。人はみな異なるDNAを持っています。DNAによって酵素とビタミンの親和力が決まるため、ビタミンの必要量にも個人差が生まれるということです。
これをクルマに例えてみましょう。クルマを動かすにはエンジンに着火しなければなりませんね。エンジンに着火するにはキーが必要です。キーを鍵穴に挿してひねることでエンジンが着火しますね。(もっとも最近のクルマはキーを挿すこともなく、ましてEVならエンジンへの着火すら不要ですけど、ここでは一世代前のクルマということで…)。そして、当然、キーが鍵穴に合わなければ、着火も出来ずエンジンはかかりません。
この場合のクルマが酵素、キーがビタミンと考えて下さい。せっかくクルマ(酵素)があり、キー(ビタミン)を持っていてもキーがクルマに合わなければクルマ(酵素)は動きませんね。実際のところ、私たちには3,000種以上もの酵素があり、それぞれの酵素はビタミンの受容体(鍵穴)を持っています。受容体(鍵穴)はクルマのそれとは違って、こんにゃくのように柔らかくプルプルふるえています。ですから、クルマの鍵穴のようにカッチリ形が合わなくてもある程度の許容性をもってキー(ビタミン)は挿さるのですが、この挿さりやすさには個人差があります。それぞれの酵素ごとに、それぞれのビタミンごとに、人それぞれ酵素とビタミンの親和力が異なります。
例えば、ビタミンCは数百種の代謝に必要なビタミンですが、この中で免疫の代謝を例にあげてみましょう。ある人は免疫代謝に対するビタミンCの親和力がとても高い(キーが簡単に挿さる)、別のある人は親和力がとても低い(キーがなかなか挿さらない)とすると、同じ量のビタミンCを摂ったとしても、後者の人は前者の人よりも免疫力が低くなります。その結果、よく風邪をひくし癌にもなりやすいということになるわけです。このように個人差が生まれるのですが、これはその人の体質的な弱点とも言えます。よく「体質的に○○が弱くて…」と言ったりしますね。それはこんな差から生まれたりしているのです。この親和力の差は人によって10倍から時には100倍もの差になると言われています。
このように、人によって、またそれぞれの代謝やビタミンによって親和力の差があるのです。ですから、人それぞれ体質上の弱点も異なるのですね。でも残念ながら、このような弱点を正確に調べることは現在の技術では困難です。では、体質だからと諦めるしかないのでしょうか。いや、諦めるのはまだ早いです。
鍵穴にキーが挿さりにくいなら、よりたくさんのキーを用意して次々と挿していけば挿さる確率も上がりますよね。鍵穴は柔らかくてプルプルしてるのですから。つまり、たくさんのキー(ビタミン)を準備すればいいわけです。たくさんのビタミンを摂れば、たとえ親和力が低くても、この弱点を補える可能性が上がると言うことです。要は、「数撃ちゃ当たる」と言うことです。乱暴な言い方ですが、こうすることで体質的な弱点をカバーすることが出来るのです。先の例えで、免疫代謝におけるビタミンCの親和力が10分の1しかないのであれば、10倍のビタミンCを摂れば、風邪をひきやすい、癌になりやすいという体質上の弱点をカバー出来るという理屈になります。
分子栄養学には、メガビタミンという概念があります。ビタミンは微量栄養素ですが、サプリメントを使ってより多くのビタミンを摂取する、そうすることによって、体質上の様々な弱点を補うことができ、これが結果として老化や病気の進行を遅らせたり、あるいは病気の予防や治癒にもつなげられる。これがメガビタミンというアプローチです。
もし、ビタミンの親和力がとても高く、少量のビタミンでも十分に代謝が回る人がメガビタミンを摂ったらどうなるのか心配でしょうか。ビタミンBやビタミンCなどの水溶性ビタミンは余剰分は尿として排出されますから心配いりません。ビタミンDやビタミンEなどの脂溶性ビタミンは過剰症もあるので、少し注意は必要ですけどね。
自分の身体のどの酵素とどのビタミンの親和力が低いのか(体質的な弱点)なんてわからないのです。尿から排出されちゃうならもったいないなんてセコいことは考えず、しっかりたくさんのビタミンを摂った方が健康のためには良いと思います。
と言うことで、冒頭の問い「ビタミンはどれぐらいの量が必要なのか」。この答えをが確率的親和力から導くならば、「必要量は人によってマチマチ。けれども出来るだけたくさんの量を摂る方がベター」となるでしょうか。