コラーゲンというと、女性の皆さんにはちょっと気になるとキーワードでしょうか。若々しいお肌=コラーゲンみたいな図式で語られることも多いですからね。コラーゲン入りの化粧品を肌に塗り、コラーゲン鍋を食べ、そしたらお肌がプルプルにみたいに喧伝されてますね。でも、ことはそんな単純ではありません。ここでは、そんなコラーゲンについて、少しスポットを当ててみましょう。
前の記事でも触れたように、コラーゲンは構造タンパクに分類されます。細胞の接着剤として、私たちの身体を形作るタンパク質になります。体内のタンパク質の3分の1がコラーゲンなのです。ですから、老化はコラーゲンの老化によって起こると言っても過言ではありません。皮膚(お肌)もそのうちの一つです。
例えば、ぎっくり腰は細胞そのものが傷つくのではなく、コラーゲンが破れることで起こります。また、コラーゲンの分子が架橋結合(クロスリンク)することでシワが出来ます。架橋結合とは、本来は独立しているコラーゲン繊維同士の間に橋が架かったようにくっついてしまう現象です。くっついた箇所が引っ張られることで、そこにシワが寄るのです。そして、架橋結合が起こる原因の一つは活性酸素にあります。活性酸素は様々な要因で生じますが、その一つに紫外線があります。ですから、カラダと比べると紫外線を浴びやすい顔にはシワが出来やすいのです。
細胞は一定周期で入れ替わります(ターンオーバーします)。活性酸素でやられてしまったコラーゲンが速やかにターンオーバーすれば理論上はシワは出来ないはずです。でも、コラーゲンのターンオーバーは28日程度とされており、歳をとるとさらに長くなり42日程度になります。もちろん、個人差はありますが、総じて歳をとると誰しもターンオーバーが長くなるので、シワも増えていくわけですね。とは言え、ターンオーバーの期間は長くなるにしても、ちゃんと入れ替わるのだから手の打ちようはありますよね。
だったら冒頭にも書いたようにコラーゲンを肌に塗ったり、コラーゲンをたくさん食べれば効果あるんじゃないかと思うわけです。でも、これってホントに効果あるんでしょうか。まったくないとは言いません。でも、コストパフォーマンスの観点から見ればあまり良いとは言えません。少なくとも私は買いません。企業は営利を追求しますから、商品に付加価値を付けて消費者にたくさん買って欲しいわけです。だから、「コラーゲン」をくっつけて商品価値を訴求します。また、それによって少し高めの値段でも消費者に受け入れられたりするのですよね。
そもそもコラーゲンって何でしょうか。そう、タンパク質ですね。タンパク質はアミノ酸から出来ていますよね。そして、コラーゲンを摂ったらそのままコラーゲンが身体の必要なところに届くかと言えば、残念ながらそう都合良くいきません。コラーゲンは胃や小腸で消化酵素によってアミノ酸まで分解され、ようやく吸収されるのです。アミノ酸分子が結合したタンパク質の状態のままでは吸収出来ません。
タンパク質はDNAの設計図に基づいてアミノ酸分子を組み立てたものです。前述の商品に使われているコラーゲンは豚や鶏などから抽出したものが多いと思います。ということは、そのコラーゲンは豚や鶏のDNA情報を持っているわけです。そのようなものをそのまま人間の身体に取り込んだら拒絶反応が出ます。同じ人間どうしでもDNAの違いによって拒絶反応起こすくらいですから。そうならないように、「消化」をするのです。消化とは、結合状態にあるアミノ酸分子を消化酵素によって断ち切る作業なのです。タンパク質消化酵素はアミノ酸をつなぐ鎖を断ち切るナイフのようなものです。これによって、DNAの情報を消し去るのですね。
と言うことは、肉を食べようがプロテインを飲もうがコラーゲンを食べようが、結局は小腸まで行けば全てアミノ酸になると言うことです。もちろん、食材ごとにアミノ酸組成は違いますから、まったく同じというわけではありませんが。
ならばプロテインスコアが優れた食品を食べればいいじゃん!となりますよね。コラーゲンとして加工された割高な商品より、玉子を食べた方がはるかにコストパフォーマンスがいいですよね。もちろん、お金をいくら使っても構わないという太っ腹な人ならコラーゲンを摂ってもいいですけどね。私はそこまで太っ腹になれないので、買いませんけど。ちなみに、コラーゲンをお肌に塗ったら吸収されるのでしょうか。そんなはずないですよね。お肌は消化酵素を持ってませんからね。
同じようなことが、よく通販番組で「関節痛に効く」ってやってるアレ。ヒアルロン酸とかコンドロイチン、グルコサミン配合って喧伝してる健康食品。これらもまったく効果がないとは言いませんが、お値段の割に。。。です。同じお金をかけるなら、プロテインを飲んだ方がよほどたくさんのアミノ酸が摂取出来ます。タンパク質の質も大切ですが、しっかり量が摂れていてこそなのです。
テレビやネットにはさまざまな健康情報が溢れています。こういったものに振り回されないよう、善し悪しを見抜く目を持ちましょう。そのためには、やはり基本的な知識を持っておくことです。さまざまな情報を、自身の知識に照らし合わせて納得がいくものなのか(理屈が合うのか)をきちんと見極めましょう。私たちの身体のしくみはまだまだ解明されていないことばかりです。ですから、まず原理原則を押さえること、そしてそこからさまざまな知識を広げていくと良いでしょう。新たなことが解明されれば知識も陳腐化する場合がありますから、アップデートも必要です。やはり継続的な勉強は必要ですね。