もう少しタンパク質について掘り下げてみましょう。タンパク質は私たちの細胞の核の中に格納されているDNAにその製法が記録されています。DNAが身体の設計図であると言われる所以です。アミノ酸20種を様々に組み合わせることで、様々なタンパク質が作られます。タンパク質から細胞が作られ、それが脳や心臓といった様々な器官になるのです。
脳でも心臓でも、それぞれの細胞内のDNAには全て同じ設計図が格納されています。でも、脳で心臓のタンパク質が造られるなんてことはありません。その逆も然りです。脳のタンパク質を作る時には、脳の製法が書かれた部分を読み込んで脳細胞を作るのです。心臓なら心臓の製法が書かれた部分を読み込みます。脳細胞の中に突然心臓の細胞が出来たらまずいですからね。
さて、あらゆるタンパク質を構成するアミノ酸20種は、必須アミノ酸9種と非必須アミノ酸11種に分けられます。必須アミノ酸は自分の体内で作ることが出来ないアミノ酸、非必須アミノ酸は自分の体内で作ることが出来るアミノ酸です。自分の体内で作ることが出来ないということは、外部から取り込むしかないということです。
では、体内で作ることが出来る非必須アミノ酸の方は外から取り込まなくて良いのでしょうか。いえ、そうではありません。非必須アミノ酸は必須アミノ酸を材料にして作られます。非必須アミノ酸を作るために必須アミノ酸が消費されてしまうので効率が悪いのです。ですから、必須/非必須に関わらず、アミノ酸20種全てをしっかり摂った方が良いのです。
さて、この20種のアミノ酸がどのようなバランスで含まれているのかを表すものとして、プロテインスコアというものがあります。人体の組成にとってパーフェクトなアミノ酸バランスの食品をプロテインスコア100として表します。プロテインスコア100の食品とプロテインスコア50の食品を比べたら、後者は前者の2倍の量を摂って同等と言うことになります。
一般的に、植物性タンパク質より動物性タンパク質の方がプロテインスコアは優れます。ただし、植物性タンパク質にも利点はありますから、一概にダメと言うわけではありません。プロテインスコアが低い分だけ量を多く摂らなければならないと言うことです。ちなみに、プロテインスコアが100の食品は、玉子としじみです。玉子は価格も比較的安いですし、料理もカンタン、バリエーションも広いので、まさに理想的なタンパク源と言えます。もちろん、タンパク質以外の栄養素も優れています。そして、プロテインスコアは食べ合わせでも変わって来ます。例えば、米と大豆はそれぞれが不足するアミノ酸を相互に補完し合うようなアミノ酸組成ですから、ごはんと味噌汁を一緒に食べると、それぞれを単品で食べるよりプロテインスコアが良くなるのです。
プロテインスコアと同じような指標に、アミノ酸スコアというものもあります。よく似た名称なので、同じものだと勘違いされやすいですが両者は別物です。例えば、牛乳はプロテインスコア74ですが、アミノ酸スコアになると100に。大豆はプロテインスコア56ですが、アミノ酸スコアになると86と言った具合です。総じてアミノ酸スコアの方が甘い数値になっています。この背景には、政治的な思惑が影響しているようですから、参考にするならプロテインスコアの方にした方が良いですね。