ミネラルは無機物(鉱石・金属)で、人体には16種のミネラルが必要です。人体では生成出来ない栄養素という意味では、ビタミンや必須アミノ酸、必須脂肪酸などと同じですね。ミネラルは、比較的多くの量が必要な主要ミネラル(一日当たりの摂取量が100mg程度以上)7種とそれほど多くの量を必要としない微量ミネラル(一日当たりの摂取量が100mg程度以下)9種に分類されます。それぞれを列挙すると以下の様になります。
○主要ミネラル7種
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素
○微量ミネラル9種
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト
普段よく耳にする馴染みのあるものと馴染みのないものが並んでいることと思います。馴染みのあるものは主要ミネラルの方に多いんじゃないでしょうか。でも、馴染みのない微量ミネラルだからと言って重要でないということではありません。微量だけれども、必要量を摂らないと健康上の問題が生じるので注意が必要です。
では、ミネラルは何から摂れるのでしょうか。まさか、鉱石や金属をかじるわけにはいきませんよね。ビタミンは野菜や果物、動物性食品などに含まれています。一方で、ミネラルは野菜や魚介類・海藻類などに多く含まれています。これは、土壌に含まれるミネラルを野菜が、また海水に含まれるミネラルを魚介類・海藻類が吸収し蓄えているからなのです。ミネラルウォータなんかも土壌のミネラルを蓄えている水と言うことですね。
私たちの体内のミネラルバランスは太古の海のミネラルバランスに非常に近いと言われています。妊婦さんの羊水のミネラルバランスも同様です(ただし、濃度は海水が4倍濃い)。私たちの先祖は、40億年ほど前に海の中で誕生しました。そして、4億年ほど前に陸に上がったと言われています。陸に上がって4億年も経つのに海水と同じミネラルバランスを保っているのは驚きです。でも生物の歴史から見ると海の中での生活の方が遥かに長いわけですからこれも頷けますね。太古の祖先は、海中のミネラルを生命維持のためのさまざまな代謝に使っていたわけです。その後、私たちは陸に上がったけれど、陸に上がってからも海の中にいた時と同じように体内にミネラルを保持していないと生命が維持出来ないのです。ですから、陸に上がった後は、土壌や海中のミネラルを野菜や魚介類・海藻類を通して摂取しなければならないわけです。
でも、現代は非常に困ったことに、ここに不都合な事実があります。ビタミンのお話しでも触れましたが、現代は化学肥料や農薬によって、土壌(農地)がすっかり痩せてしまっています。土壌に含まれるミネラルが減少してしまっています。ミネラル不足の土壌からは、ミネラル不足の野菜しか採れないのは当然のことです。文部科学省の日本食品成分表によると、1950年と2015年の比較で、ほうれん草の鉄分は85%も減少。ニンジンや大根などその他の野菜でも、80%ほど減少しているとされています。
また、食生活の変化により魚介類・海藻類の消費も減っており、その結果として現代では多くの人に鉄やマグネシウムを始めとしたミネラル不足があるようです。歳とともにミネラルの吸収力も落ちます。そして、ミネラル不足が老化を加速させ、慢性病の要因にもなります。高血圧や心臓病、うつ病、骨粗鬆症、ひいてはガンに至るまでミネラル不足がその陰に隠れていることがあります。
では、次回から主要なミネラルについて、その働きや過不足時に生じる問題などを解説していきたいと思います。